第25回 呼吸法⑥息を止める(クンバカ)

  • ヨーガ……呼吸法⑥息を止める(クンバカ

 息を止めることを「クンバカ」といいます。極度に集中を要する作業をしているときや、渾身の力を込めるときには自然にクンバカ状態になります。逆にクンバカを練習することですばらしい集中力と気力、忍耐力を身につけることができます。

1、自然止息(ケワリークンバカ

 カパーラバーティのような素早い呼吸の後では自然なクンバカ状態が訪れます。また、瞑想が深まってくるとやはり同様なクンバカ状態が何秒間か訪れては途切れ、訪れては途切れします。この自然止息がもっとも質の高いクンバカです。このクンバカ中の気持ちよさを味わうようにします。

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 図のように手を膝につっぱり、できれば肘を伸ばして肩を上げ、胸一杯息を吸い、あごを胸に押し当てた状態で息を止めます。秒数を数えながら限界の一歩手前まで止めています。それから顔を上げ、片方の鼻を押さえて息を吐きます。吸うときは両方の鼻の穴から、吐くときは鼻の穴を交互に使います。数回繰り返します。2、のどのバンダ(ジャーランダラ・バンダ)によるクンバカ

3、肛門のバンダ(ムーラ・バンダ)によるクンバカ

 息を吐き切ったとき、または息を吸い切ったときに肛門を引き締めて数秒間息を止めます。気が身体に満たされる感じがあります。また肛門をひきしめること自体は痔や尿の漏れ防止に効果があります。

 

  • 瞑想ノート……悩みオバケ②

 悩みオバケに取り憑かれているときの感じは自分でもよく分かるはずです。愚痴や怒りが頭の中を駆けめぐり、自信が薄らいで不安になり、落ち着かず、迷いや焦りから衝動的な決断を下したり、優しさや感謝という心持ちには到底なれず、過度に遊びたくなったり、または逆にふさぎ込んだりします。

 そんなときは頭で考えても無駄です。発想の源泉が悩みオバケに占領されているのですから、ろくな考えが出てくるはずがありません。考えれば考えるほど、愚痴や怒りや焦りが渦巻きます。

 考えることをやめて、オバケの正体そのものを五感を使って感じ取ってください。左脳ではなく、右脳を使うわけです。つまり、胸からおなかにかけて巣くっている、オバケの形、色、感触、動き、音や臭いなどを感じ取ってください。それが悩みオバケとの付き合い方の基本です。力のないオバケなら、感じ取ったが早いかスッと消えてしまいます。

 オバケの全体像をつかんだら、次にオバケに名前を付けます。この名前はそのオバケの本質をズバリと言い当てたものでなければなりません。ここは左脳と右脳の共同作業です。そして、ここが面白いところですが、本当によい名前を付けると、オバケが小さく、かわいらしい形に変化してしまいます。

 良い名前を付けるとは、まさしく自分の心に対する気づきです。ときにこの作業は簡単でないこともあります。最初は本質に近づけず、その周辺をぐるぐる回るだけということの方が多いかも知れませんが、そのうちにパッとひらめいたりします。

 オバケにつける名前ですから、最初はずいぶん毒のある名前になりがちです。例えば、「怒りオバケ」、「嫉妬オバケ」、「恐怖オバケ」といった具合です。ところが名前をつけてしばらくオバケを眺めていると、オバケに毒を与えているのは他でもない自分自身のエゴなんだということが分かってきます。このエゴに対する気づきがあった時点でオバケから毒が消え、「怒り」は「かわいそう」という気持ちに変わり、「嫉妬」は「ライバル」、「恐怖」は「自己愛」という具合になり、心の中が肯定的な雰囲気になり、オバケは消えてしまいます。

1995年12月14日