第27号 腹部のうっ血と丹田呼吸

  • 健康……腹部のうっ血と丹田呼吸

 血液循環をよくするには運動が大切であることは言うまでもありませんが、もっと簡単に、どんな人でも、病人でも、寝ていても、座っていても、立っていてもできる「丹田呼吸法」を紹介しましょう。

 川の流れが淀むと水が腐敗してきますが、血液でも同じことが言えます。特に全身の半分以上の血液が集まる腹部では血液が停滞しがちです。運動不足の上、呼吸の浅い人は、この腹部にどろどろに濁った血液がよどんでいるのです。全身に酸素と栄養を運ぶ血液がこんな状態では、健康はとても望めません。

 丹田の位置には諸説ありますが、下腹部全体と思っていただいて結構です。まず、①丹田に心を向け、ゆっくりと腹を凹ませて吐いて行き、丹田に気力を充実させます。②息を出し切ったところで下腹部にぐっと圧力を加えます。③下腹部の緊張をゆるめ、横隔膜を下げ、胸部を開き、息を肺の下部から中部、上部へと満たしてゆきます。

 この丹田呼吸によって腹部が充分にマッサージされ、血液の流れが良くなるのです。消化が良くなり、糖尿病や肝臓病も改善されるという研究もなされています。毎日十分から三十分くらい行うと、活力溢れる心身が約束されるでしょう。

(「はつらつ人生を送るために」上巻-体内の名医「横隔膜」-、倉本英雄著を要約)

 

  • 瞑想ノート……瞑想とカウンセリング

 悩んで、それを解消するとき人は成長します。小さな悩みに対しては、それに向き合ってまじめに考え、誰の手も借りずに解消することも可能ですが、大きな悩みは容易ではありません。いつも大きな悩みに向き合っているのはとてもしんどいことなので、普段はそれについてあまり考えず、棚上げして過ごすのが普通です。そしてときどき、それについて考えざるをえないようなことがあると、ひどく落ち込んでしまいます。

 あるいは瞑想が、そうした大きな悩みと向き合わなければならない時間であるとしたら、それは辛くて長い時間に違いありません。しかし、瞑想を続けていると、自分のことをまるで他人のことのように客観的に観られるようになってきます。どんな大きな問題でも、それは自分のことではなく、映画の中の主人公の悩みに近い感覚になってくるのです。

 「私=悩み」という状態から「悩んではいるが、私=悩みではない」と考えられるようになれば、あとは何らかなの智恵かテクニックがあれば悩みは解消します。「私=悩み」の状態では悩みを誰かに打ち明けることさえできません。打ち明けられる時は、すでにある程度心の整理が付いて、悩みが自分から遊離しかかっている時です。

 良いカウンセラーは辛抱強く来談者の心に向き合い、少しずつ心の整理を手伝い、「私」と「悩み」を切り離して行き、そして最後に悩みを超越する智恵を授けます。それは修行者が、瞑想によって悟りを開いて行く過程と全く同じです。智恵は常に閃くものであって、最初から答えが分かっているというものではありません。瞑想者、そしてカウンセラーと来談者は常に疑問や悩みというオバケと格闘して、最後に智恵を勝ち取るのです。

 一つ悩みをクリヤーすれば、一つ悟ったと言うことができます。そうやって人生におけるさまざまな悩みを、一つ一つ乗り越えて、一つ一つ悟っていった先に完全なる自由の境地があります。ですから瞑想、あるいは禅とカウンセリングは切っても切れない関係にあるといえます。

1996年1月21日