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第29回 自己実現

  • 健康……健康の復元力

 自律神経系、内分泌(ホルモン)系、免疫系は健康の復元力を担う三人兄弟です。この三人兄弟の強力な助っ人となるのが実はヨーガです。現代人はストレスから自律神経の中でも交感神経のみが異常に興奮した状態が続き、胃潰瘍や高血圧の原因を作っています。

 さらに、ヨーガのポーズは骨を強化し、骨髄での造血機能を活性化するので、免疫細胞の増産に役立っています。また、「体の各部分を徐々にゆるめながら全身をリラックスさせることで、血液に活性化したナチュラル・キラー細胞(ガン細胞を攻撃する)が増大し、免疫力が強化される」ことがアメリカでの研究からも明らかにされています。つまりヨーガはガンの予防になるということです。

 ヨーガのリラックスを主とした行法は、副交感神経を刺激し、自律神経系全体のバランスを取ります。また、ヨーガは、脳下垂体や甲状腺、胸腺、副腎などの内分泌器官を効率的に刺激するのでホルモン系が整えられます。

 ただし、この健康の復元力を担当する三人兄弟は心の影響を強く受けます。怒り、恐れ、悲しみ等のマイナスの心は復元力を弱め、反対に、喜ぶ、愛するなどのプラスの心は復元力を著しく高めます。

(「はつらつ人生を送るために」倉本英雄著より要約)

 

 「アルジュナよ、意識の中にあるすべての欲望を捨て、自己の本質(アートマン)のみに至福を感じるとき、その人は智慧が確立したと言われる。(2.55)」

 これはヨーガ最高の聖典「バガバッド・ギーター」の一節です。「自己の本質(アートマン)のみに至福を感じるとき」とは、私たちの本質が愛、光、歓喜そのものであるというヨーガの理論と体験に基づいています。普通は何か欲していたものを得たときに幸せや喜びを感じるものですが、実は一切の欲を捨てたときに、人間が本来持っている無上の幸せに全身を貫かれるということです。

 しかし、そうと分かっていても、簡単に欲望を捨てられるものではありません。無理に捨てようとするとよけいにその欲望の対象がクローズアップされたりします。

 ところがここでヨーガとは少し違った視点である禅の「あるがまま」という考え方に立ってみますと、あるものはすべてあるようにある、つまり欲望もそのまま許容すればよい、ということになります。もちろん社会にはルールがありますから、「自分の中にはこういう欲望があるな」と、許容はしても、実行してはいけないものもあります。そこはヨーガの定める禁戒や社会のルールに従うべきです。

 このような考え方ができれば、欲望は人間を自己実現という壮大な目標に導いてくれる最大の推進力です。欲望があるからこそ、人は才能を開花させ、社会で活躍できたり、家事や子育てに一生懸命になれたりします。また「アートマンのみに至福を感じる」こと、つまり解脱も一つの崇高な欲望であって、これの達成は最大の自己実現と言えます。

 欲望は私たちの行動の原動力であり、行動の方向を決めるものです。それは神から授かったものと言うことさえできます。瞑想により、自分の欲望を知り、それを社会のルールを乱さないように、上手に解放する方法を考えてください。そしてそれを実行するための長期的計画を立て、その計画に従って日々の過ごし方を決めてください。そこまでできたら、後は結果を気にしすぎることなく、ただ計画を遂行すること自体を楽しむようにします。「結果を求めて行動するものは哀れである。(バガバッド・ギーター 2.49)」

1996年2月1日