第15回 「勧戒② 満足」

 鼻はにおいを嗅ぐ感覚器官としての働きだけでなく、吸い込んだ空気を鼻の奥で体温に近い温度まで暖めてから肺に送り込んだり、鼻毛や粘膜でほこりなどの異物を取り除く働きをしています。最近は排気ガスなどの大気汚染や不健康な生活が重なって鼻炎、鼻水などの症状が増えています。

 アーユルヴェーダではゴマ油を鼻孔に垂らすことを健康法として勧めています。あおむけに寝て、鼻の穴が天井に向くくらい首を反らせ、各鼻孔に2滴ずつゴマ油を入れます。そして、片方の鼻孔を指で軽く押さえて、もう一方の鼻孔からゆっくり空気を吸い込みます。1~2分あおむけに寝たままでいます。ゴマ油を垂らす際には自分の指に油を浸し、その先から滴らせるようにします。もちろん指はきれいに洗ってあるべきです。

 鼻に対する効果だけでなく、若白髪を予防したり、顔の血管・筋肉・神経の働きを良くします。鼻炎の人は1日に2回ほどこの方法を実践してください。非常に効果があります。花粉などのアレルギー性鼻炎で悩む人は、外出する前に行うことが勧められています。

 

  • 瞑想ノート……② 満足

<満足>すべてにおいて満ち足りていると心の底から思うときに人は幸福感を覚えます。満ち足りていると思うのは心の働きですから、実際に自分がかっている環境(住まい、経済状態、健康状態、家庭、人間関係、仕事など自分と関わりのあるものすべて)の状態には本来関係はありません。同じ環境にいながら満足している人もいれば、満足できない人もいるのはそのためです。

 私たちは回りのものに自分の意識を投入しています。身近なものほどよけい深く投入します。すると、意識を投入したその対象から反射波が返ってきて、私たちの心を波立たせるのです。対象が意識を持たないものであれば、意識を投入したその強さに応じた反射波が返ってきますし、対象が人間であれば反射波は増幅されて返ってきます。この真理を深く理解し、良い反射波が返ってくるように意識を投入したり、あるいは意識の投入の強さを加減することで私たちは環境の影響力から自由になることができます。環境自体がどんな力を持っているわけでもありません。私たちが意識を投入することでそれに力を与えているのです。もしあなたが悪い環境に浸っているとするなら、それはあなた自身がその環境に力を与えていることに気づくべきです。

 また、普段意識することのない環境が案外私たちに力を与えてくれている場合が良くあります。そういう「空気のような存在」に気づくことで私たちは心を豊かにすることができます。実際、激しく自己主張する存在は私たちの心を乱しやすいものです。そういう存在にはあまり目を向けずに、むしろ自己主張しない空気のような存在に注意を向けるのが満足を獲得する一つの秘訣と言えるかも知れません。

 もう一つ、最高の満足と言えるのは対象を必要としない満足です。ただ生きているだけで満足、ただ息を吸ったり吐いたりしているだけで満足というような無条件の満足です。ヨーガで求めているのはこの満足です。私たちは瞑想中にはしばしばこのような体験(至福体験)をいたしますが、瞑想中以外の普段でもこの感覚の中にありながら生活できれば本当に幸せです。しかしここに至るには環境に対して一通り満足でき、また空気のような存在に気づき、感謝するといった過程を通ってくる必要があるのです。無条件の満足に至った人は常に周囲に光を与えます。しかしそういう人は自己主張することの少ない、さらりとさりげない、空気のような存在ですので、注意深い人しかその人のすばらしさに気づくことがありません。

1995年8月26日