第37号 バガバッド・ギーター 7 理論によるヨーガ

  • バガバッド・ギーター……第二章(64~72) 理論によるヨーガ

 五感を自己の支配下に治め、感覚の対象物への愛憎を離れることによって自己を制御した人は寂静に到達する。64

 寂静に至った人は、速やかにを確立するので、彼の苦悩は全て消滅する。65

 神に専念しない人は智慧を確立することなく、また、瞑想することもない。瞑想しない人には寂静もない。寂静でない者にどうして幸福があろうか。66

 対象物を追って動き回る五感に振り回される意識は、人の智慧を奪う。風が水上の舟を奪うように。67

 それ故に、勇士よ、五感をその対象から引き上げたときに、その人の智慧は確立する。68

 万物から対象を引き上げたときに聖者は目覚め、万物は眠る。万物が目覚めるとき、愚者もまた目覚め、智慧の聖者は眠る。69

 海に水が流れ込むとき、海は満たされつつも不動の状態を保つ。同様に、あらゆる欲望が彼の中に入るが、彼は寂静に達する。欲望を求める者はそれに達しない。70

 すべての欲望を捨て、また自我より生じる「私」とか「私のもの」という思いもなく行動すれば、その人は寂静に達する。71

 アルジュナよ、これが最高神ブラフマン)に到達した解脱の境地である。ここにおいては迷いというものがない。この境地にあれば、臨終において肉体を捨てるとき、涅槃に達し、最高神と同一化する。72・・・・・第二章終わり

 

  • 解説……寂静・解脱・涅槃

 寂静とは心が平和で澄んだ状態にあることを言います。日々、瞑想し、欲望を制御することで寂静は得られます。現代のように欲望をあおり立てるものが溢れている状況でこそ、寂静に至る努力は続けられるべきです。多くの人が寂静を目指すことで世の中全体が平和になって行きます。

 解脱とは、寂静が頂点に達し、それが永続している状態です。しかし肉体を持つ限りは食欲や性欲、睡眠欲、病気に対する恐れ、死に対する恐れを抱きます。そうした、あらゆる欲望が日々やっくるので、解脱の状態を保つのは難しいことです。涅槃とは、死を迎え、肉体を離れることで得られる完全な解脱です。生前から寂静を心がけている人にとって、死は永遠の安らぎと受け止められるようになります。

 しかし私たちは寂静を目指しつつも、社会に関わり、日々の行為をして行かなければなりません。行為は新たな欲望を引き出すこととも言えます。いかに行為すべきかについて、第三章以降に説かれます。

1996年4月21日