第32号 バガバッド・ギーター 2 理論によるヨーガ

  • 健康……奉仕で健康

 半身不随の上にガンを併発したお年寄りが、奉仕生活で健康を取り戻したお話を紹介しましょう。これは、日本のヨーガのパイオニア故沖正弘先生から生前に聞いたものです。

 この方は、難病を治すために、あちこちの病院を転々としましたが、悪化するばかりなので、最後の夢を託してヨーガの門をたたいたのです。

 そこで沖先生は「体で奉仕するのなら受け入れます」と答えました。すると、「この重病人で、老人の私に他人の奉仕をせよというのですか?こちらがしてもらう立場ではないのか?」と、あきれ顔。しかし渋々従うことになりました。そこで、三つの奉仕の約束をさせられました。①「笑うこと」。顔は自分だけのものではなく、半分は人のものだから、笑顔そのものが奉仕である。②「激励すること」口は動くのだから、周りの人に優しい言葉、明るい言葉をかけ激励する。病と闘っている人から励まされれば、その人は奮い立つはずだ。③「指圧して上げること」片手は動くのだから、その手で人をマッサージして上げる。

 この三つの奉仕は、すばらしい健康法にもなっていて、とうとうこの老人は半身不随もガンも治ってしまったとのことです。(倉本英雄著「はつらつ人生を送るために」上巻)

 

  • バガバッド・ギーター……第二章(1~13) 理論によるヨーガ

 このように悲哀を感じ、涙に満ちた目を曇らせて沈み込む彼に、クリシュナは語った。1

「まさに戦いが始まろうとしている今、そんな弱気がどこからあなたに近づいたというのか、アルジュナ。貴人はそのような態度を決して好まない。そんなことではあなたは天界に導かれることもなく、返って不名誉がもたらされるだろう。2

 アルジュナよ、女々しさに陥ってはならない。それはあなたにふさわしくはない。卑小な心の弱さを捨てて立ち上がれ。」3

アルジュナは言った。

「クリシュナよ、いま見回してみるに、敵陣には我が師であり、尊敬するビーシュマやドローナがいる。どうしてあの人達に矢で立ち向かうことができようか。4

 威厳に満ちた師匠たちを敵に回して戦うよりも、この戦いを放棄して乞食となり、施しものを食べる方がよっぽどいい。師を殺すことにより、師の願望達成を妨げるという大罪を犯せば、私が手に入れるであろう王国は血にまみれたものになるだろう。5

 私は迷いの縁に沈んでいる。我々が勝つべきなのか、彼らが我々に勝つべきなのか…。彼らを殺してまで我ら一族は生きたいとは思わない。6

 私は悲哀に本性を損なわれ、自らの義務(ダルマ)について迷っている。クリシュナよ、お願いだから私にきっぱりと告げてはくれないか。私はあなたの弟子である。あなたに寄る辺を求める私を教え導いてくれ。7

 もし我らがこの戦いに勝ち、この地の王となり、そして繁栄と神々を司る権利を得たとしても、私は襲いくるこの虚脱感や悲しみを、どう取り除いて良いのか分からないのだ。」8

 勇士アルジュナはクリシュナにこのように告げ、「私は戦わない」と言って沈黙した。9

 

 両軍の間で沈み込む彼に、クリシュナは微笑して答えた。10

「あなたの嘆きは的を得ていない。いろいろ理屈を言うが、それらは当たっていない。賢者は生死について嘆かないものだ。11

 今、ここにいる私も、あなたも、そして、敵陣にいる王たちも、その魂は永遠に存在し続け、滅びることがないのだ。12

 魂はこの肉体にて少年期、青年期、老年期を経る。そして死に、また生まれ変わることで別の肉体を得る。賢者はそのことで迷ったりしないものだ。13

1996年3月2日