第24回 呼吸法⑤素早い呼吸(カパーラバーティ)

  • ヨーガ……呼吸法⑤素早い呼吸(カパーラバーティ)

 最初は両方の鼻の穴から素早く吐き出し、1~2秒かけて吸うように練習します。吐くときは腹筋を一気に引き締め、横隔膜が上に押し上げられます。くしゃみをするときや大笑いをするときのおなかの動きに似ています。吸うときは、特に吸う努力はせず、おなかの力を抜くことで息が自然に入ってきます。10~15回程度繰り返します。素早く、激しく呼吸を繰り返すことをカパーラバーティ(額の光)といいます。ここでは二通りの方法を紹介します。全て鼻で呼吸します。

 腹筋の弱い人、腹式呼吸のできにくい人は、素早く吐くこと、自然に吸うことの両方に難しさを感じるでしょうが、そういう人こそ徐々に練習を重ねてマスターする必要があります。この呼吸法ができるようになるだけで健康状態、精神状態が安定してくるからです。

 2番目のやり方は、前回のナーディ・ショーダンで説明したような指使いで鼻の穴を左右交互に使用します。まず、右穴をふさいで左穴から素早く吐き、力を抜くことで自然に吸います。すぐに左穴をふさいで右穴から同様に呼吸します。これを交互に30往復繰り返します。慣れるに従ってスピードを上げて行きます。

 鼻の通りが良くなり、カパ(水の要素)過剰が改善されるため、倦怠感、眠気、肥満、ゆううつ、などに効果があります。素早い呼吸により血液中の酸素濃度が高まるため、自然に呼吸が停止、または極めてゆっくりになり、その間は素晴らしい精神集中状態(脳は逆に低酸素状態になっているため)と、リラックス状態が同時に訪れます。瞑想への導入として欠かせない呼吸法です。ただし、あまり激しくこの呼吸法を行うと鼻血が出たり、時に失神する事もありますので気を付けなければなりません。

 

瞑想ノート……悩みオバケ①

 夫(妻)に理解がない、子供が学校に行かない、上司と意見が合わないといった悩みの状況があるとします。私たちはそういった悩みを引き起こす状況そのものを悩みの種としますが、実は状況そのものは悩みの種ではありません。

 悩みの種は、その状況に対して反応している心の方にあります。心といっても悩んでいる本人の性格や人格を指してはいません。悩んでいるときに私たちが良く感じる「胸のあたりのもやもや」または「胸が締めつけられる感じ」、「真っ暗で光が見えない感じ」、「屈折した感じ」、「ぎすぎす、とげとげした感じ」、それらが本当の悩みの種です。もし、普通なら悩みを引き起こしそうな状況下にあっても、胸の当たりに清涼感があって、スカッと爽やかなら、その人は悩んでいるとはいえません。

 またもし、問題になりそうな状況が何もなくても「胸がもやもや」しているなら、それは充分悩みといえます。こういう状態で誰かに相談しても、「あなた何が不満なの」と聞かれて、答えられず、よけいもやもやして終わりです。

 そういった胸やおなかのあたりの感じは、ざらざら、ぬめぬめ、ふんわりといった感触を持ったり、真っ黒、灰色、赤、といった色を持ったり、とげとげ、まん丸、といった形を持ったりしています。これは物質でもなく、単なるイメージとも言えず、夢でもなく、コンピューターグラフィックでも表現しえないような現実味を持っています。現実のものではありませんが、現実のもの以上に私たちに影響を与え、私たちをコントロールしています。そしてそれは何かの拍子に簡単に形や色や感触を変えたり、消えてなくなったりします。

 私はこれを悩みオバケと呼ぶことにしました。悩みの正体は心に巣くうオバケです。悩んでいる人の心には悩みオバケが住んでいるのです。「私は悩まない」という人の心にもエゴオバケが住んでいることがありますので油断がなりません。エゴオバケは知らないうちに人を悩ましているのです。次回はこれらのオバケと付き合う方法について述べます。

1995年11月27日