第3回 「逆立ちのアーサナ」

f:id:heartopen:20170327230523p:plain 疲労回復、肩こり、肥満、軽度の高血圧、便秘、老化防止、消化不良、生理痛、痔などに効果があります。

 人間が直立歩行するようになってから、四つ足の動物では考えられない様々な障害が表われるようになったのですが、それは重力による内臓の下垂や腰への負担、足のうっ血、それに伴う心臓への負担が主な原因です。それを解消するには逆さまになれば良いわけで、中でも逆立ちのアーサナは手軽にできて効果の高いアーサナです。
 まず腹部臓器が正しい位置に落ち着くため消化力を高め、便秘を解消します。卵巣が刺激され、生理痛や生理不順を解消します。男性では前立腺が刺激され、精液の製造を促します。脳内の血圧が上がりますが、その結果、逆に血圧を下げる方向に体が反応します。肩や首、顔の血行が良くなるので肩こりを解消し、顔色を良くします。のどから甲状腺ホルモンの分泌が盛んになり、その働きによって若さが保たれ、太りすぎを防止します。
 
 アーユルヴェーダでは日の出の96分前に起きることを奨励しています。日の出前は心と体に調和をもたらす自然からの特別なエネルギーに満ちた黄金の時間帯と言えます。また、夜中の2時くらいから明け方6時くらいまでは風の働き(ヴァータ)が優勢になる時間帯で、比較的目が覚めやすいものです。またヴァータの影響で心と体が軽々としているのです。ところが6時を過ぎますと水の働き(カパ)が優勢になりはじめ、返って目が覚めにくくなります。
 早起きを実践するには早寝が絶対条件です。夜6時から10時くらいまではやはりカパが優勢な時間帯で比較的眠りにつきやすいものです。一週間くらい早寝を続けていると自然に早朝に目が覚めるようになります。そうやって、早寝早起きの良いリズムを付けるようにしましょう。
 朝起きたら、顔を洗い、口をゆすぎ、白湯を一杯飲みます。これらは体に給った老廃物(アーマ)を洗い流す大事な朝の務めです。夏ならば、シャワーを浴びると良いでしょう。体の表面にも汗と一緒にアーマが出てきているからです。口をゆすぐときにタングスクレーパー(ステンレスまたは銀製でU字型の舌を清掃する器具)を使って、舌の表面に浮き出ているアーマを取り除くと、口臭予防や口内衛生を保つ上で良い効果があります。
 大便もできるだけ朝早いうちに済ませます。スムーズに排泄するための方法は体質により異なります。項を改めて解説します。
 
●瞑想ノート……「気持ちよさ」が人間の本性
 瞑想していると次第に気持ちよさを体験します。なぜ気持ちよくなるのでしょうか。それは気持ちよさが人間の本来の性質だからです。瞑想中は人間の本来の性質に覆い被さるストレスやその他の曇りが薄くなったり押し退けられたりするので、本来の気持ちよさがにじみ出てくるのです。
 人間は本来、気持ちよさ、優しさ、愛、などの善の性質からなっています。ヨーガは人間の本来の状態に戻るための方法なのです。無理に努力して自分自身をある一つの型にはめようとするのは間違った方法です。力を抜き、いっさい努力しないで自然に任せてみてください。
 もちろん最初から瞑想で気持ちよさを体験する人は希です。ストレスの多い生き方をしている人は瞑想でさえ、最初はストレスの原因になります。瞑想中に雑念となって浮かび上がってくる自分の「本音」を受け入れることができないからです。しかし瞑想を続けることによって次第に「今の自分」を「本来の自分」と一致させられるようになり、気持ちよさという本性の中に生きられるようになるのです。
 
1995年4月22日発行